AP/FD NEWS Letter 2号
5/8

5公開授業 「土木史と技術者倫理」細田暁 准教授授業公開日:平成26年12月16日(火) 授業時間:3限対象学生:1年~(全学部) 受講生数:約220名授業形式:講義授業の進め方 いくつか顕著な特長があげられる。第一に、毎回授業の終盤にレポートが課される。学生それぞれが、必ず自分でタイトルを付け、真に感じたり考えたりしたことを講義終了時に提出する。採点されたレポートは翌週に返される。その繰り返しにより学生は自ら考えるようになり、発見があり、視野が広がっていくという。教員の側でも3ケタのレポートを毎週採点するのはたいへんだと思われるが、毎回そのレポートを見るのが楽しみだという循環が生まれているという。毎回の評価の積み上げが学生の評価となる。第二は、本当はこれが最も重要なことと感じた点だが、教員の側で学生に合わせてはいない。むしろかなり率直に学生にメッセージを出し、達成すべきレベル等をはっきりと伝えている。かなりインパクトがある。第三はどちらかというと授業方法に近いが、この道の優れた教科書を使って毎週1章ずつ吟味・解説し掘り下げていく。その進め方もユニークで、最後の章からスタートしさかのぼっていく。 このように分解して説明すると、細田先生の授業の真の魅力が伝わらないおそれもあるので最後に補足すると、学生との距離がとても近い。インターネット等も必要なところで使い、学生と会話する場面もしばしばみられた。授業の工夫 既に「進め方」の方でも書いてしまったので補足的に書くと、各所で工夫が多くみられた。ある意味「スタイル」というか「型」のようなものが確立していて、それを成立させるための部品がいくつかあり、相互にうまくそれらが有機的に打ち出されていると感じた。例えば、教科書に沿って進めること、パワーポイントだけでなく、インターネット情報での確認、参考図書の紹介など。その紹介も単なる客観的解説ではなく、自らの読書経験や考えなども前面に出している。 しかし個々の工夫以前の教員側のモチベーションを強く感じた。担当教員から一言 私は講義を、学生と教員を結ぶ現場の中でも最重要視しています。特に、この講義は教養科目でもあるため、多くの学科や学部の学生が受講します。くにづくりの学問である土木工学、歴史、日本、その延長にある世界、読書等に真の興味を持ってもらうよう、私の持てる全力で学生と向かい合っています。生涯をかけて自分を成長させていくためのヒントを、学生それぞれがキャッチしてもらえればと願っています。公開授業 「機械力学I」中野健 准教授授業公開日:平成26年12月18日(木) 授業時間:I限対象学生:理工学学部 2年 受講生数:63名授業形式:講義授業の進め方 機械力学Iは機械工学EPの2年生向け選択必修科目であり、Ame2クラスを対象として開講している。今回の講義では、バネ-質量系に減衰作用が加わる場合の運動方程式とその解の性質を論じた。要点をまとめた配布プリント(今回分はA4用紙2枚、講義全体では8枚程度)を配布したうえで、黒板への板書を行いつつ解説を進めている。 主に基礎的な理解度を測るための小テストを10回程度行っている。小テストは採点したものを次の週に返却し、希望する学生には再提出(再チャレンジ)を認めている。 数学的な式の扱いと、それが表現している物理モデルの説明を行き来しつつ、丁寧な説明がなされていた。また講義全体のなかでの今回の話題の位置付けについてもたびたび触れて、学生の理解を深めている。授業の工夫 講義では、運動方程式およびその特性方程式の解を扱っているが、式展開における考え方や項のまとめ方についての方針をかなり詳しく説明し、何のために式を変形していくのかを強く意識付けている。また、数式を表すグラフの微妙な差異が重要な箇所では配布プリントに印刷された正確な図を利用して説明する一方、概念的な理解が必要なところでは、その場で簡単なモデルと図を板書するなど、状況に応じて使い分けを行って非常に丁寧に講義をしている感がある。数式の展開でも板書の重複を厭わずに書き進める一方で、すでに講義で説明した箇所については少し飛ばすなど、時間をうまく使う工夫もあった。パラメーターの数値と、実際の現象との関係は把握しにくいことがあるが、講義ではプリントに用意した代表的なパラメーターにおける運動軌跡を多数示しつつ、実用的な感覚やセンスを伝えようとする工夫もされていた。あとで伺ったところでは、講義メモをあえて作らず、学生に配布したプリントだけを見ながら講義をし、ライブ感を出すことと教員が考えている過程をあえて見せることを意識しておられるとのことであった。担当教員から一言 振動現象を好きになってもらうにはどうしたらよいか?それを第一に考えて、授業の構成や語り口を決めています。授業を通して我々教員ができることは、あくまでも、学生たちに「正の初速」をつけることであると思うからです。難しい事象を難しいまま教えるのは、ある意味で簡単なことですが、難しそうに見える事象をどれだけ簡単に見せることができるか、それこそが我々教員に最も求められている技量ではないかと思います。公開授業 「中等数学科教育法C」両角達男 准教授授業公開日:平成26年12月16日(火) 授業時間:4限対象学生:教育人間科学部 3~4年 受講生数:約30名授業形式:講義授業の進め方 この授業では、小学校から中学校にかけての算数・数学という教科の系統性を概観させるとともに、生徒の理解の様相に焦点をあてることを通じて、中学校数学の学習内容や学習指導を理解させるための授業を展開している。本公開授業では、「折り紙を使って一組の三角定規をつくる」という実際に学校現場で行われている活動を題材にして、図形の論証(証明)導入期の学習指導のあり方について解説した。 授業では、まず導入として、小学校から中学校にかけての図形学習の流れを示し、どのような学習過程が意図されているのかを概説した。授業中には、折り紙を使った活動を行うとともに、グループで議論させながら中学生に図形の性質を理解させるための問題に取り組ませ、そうした活動が意図している学習内容の理解へと導いていた。まとめでは、問題を解くための様々な方法から図形の性質への理解へつなげるための学習内容について、全体の流れの中での位置づけを意識させ、次回授業への導入を行った。これらのことを通じて、この授業では受講する学生らに小学校とは異なる中学校での数学科の学習内容を直感的に習得させ、その教育法について学ばせていた。授業の工夫 この授業では、将来教員になる学生が中学校における図形学習の内容を十分に理解した授業ができるよう、工夫されていた。例えば、担当教員が学校現場で行っていた活動を実際に中学生や高校生になったつもりで学生に取り組ませた後、高次の視点から振り返ることで、その学習内容への理解や授業方法の取得へとつなげていた。また、提示した問題をグループで議論させながら解かせ、さらに白板を用いて全体に説明させることを通じて、学生同士で活発に議論させ、さらなる理解へと導いていた。こうしたことで、全15回の授業を経た後、学生自身が教科書や教材において意図されている背景を理解した上での図形学習の授業ができるようになるような授業内容となっている。担当教員から一言 大学での学びを経て、学生はそれまでの学ぶ側から教える側になる。そのためには、単に教科書に書かれていることや例示されている教材を使うだけでは不十分であり、視点を変換して、それらに込められている意図や背景を理解する必要があると考える。また、教える側にとって、他分野・他教科を含めた様々な先生の授業を見ることが重要であると考えており、今後もそうした機会を通じてさらに学んでいきたいと思う。公開授業 「感覚知覚システム論」岡嶋克典 准教授授業公開日:平成26年12月16日(水) 授業時間:3限対象学生:理工学部 3年 受講生数:約40名授業形式:講義授業の進め方 この講義は、数理科学EP、情報工学EPの学生を対象とした専門科目で、感覚知覚に関する基礎知識とその工学的応用を系統的に学習することを目的としている。12月16日の授業では、「3次元表色系と等色関数」について講義が行われた。 授業はパワーポイントを使って行われ、パワーポイントの内容は、配布資料として配布される。今回の授業では、3次元表色系など色に関する基礎的事項や測色法に関して説明された。パワーポイントは、20~30枚程度で構成され、図やイラスト、写真やグラフなどがふんだんに使われ、授業内容の本質が分かりやすく伝えられるように工夫されていた。授業の中では、簡単な実験も行われ、実践的な理解が得られるように配慮されている。今回の授業では、測色計を用いて学生の持ち物などの色を測定し、合成色の実験が行われた。また、学生が自分で簡単な実験やデータ処理ができるようになるよう、演習も行われる。演習は学生の理解度の確認にも用いられ、試験と合わせて成績の評価に用いられる。今回は、二色混合による合成色の計算を行う演習が行われ、学生同士でコミュニケーションしながら熱心に取り組んでいた。授業の工夫 授業の導入では、日常生活の実例から説明が始まり、学生の興味を引きだしていた。話し方が明快で分かりやすく説明されていた。また、授業のキーポイントが、的確なキャッチフレーズで要約され、記憶に残りやすいように工夫されていた。感覚・知覚実験法、心理物理学、信号理論、統計学など、この講義でカバーされる広い分野の内容を理解しやすいように、授業の構成やパワーポイントの内容が工夫されていた。担当教員から一言 本科目は理工系の学生にとって馴染みがない内容が多く含まれているため、数理や情報工学との関連性を示しながら、基礎から応用まで幅広くかつわかりやすくその有効性と基本概念を理解してもらえるよう、説明方法やスライドに工夫を凝らしています。今回、「公開授業の振返り」でいただいたご意見を基に、今後はより学生からの応答をリアルタイムに反映させながら進めるインタラクティブな授業にしていきたいと考えております。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です