AP/FD NEWS Letter 創刊号
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大学教育総合センター FD推進部 安野舞子 平成26年9月、文部科学省の「大学教育再生加速プログラム」に、本学のプログラム「YNU学修成果の可視化―学士力と就業力の可視化による学生の主体的な学びのデザイン」が採択されました。本プログラムでは、全学的な教学マネジメントを強化し、学修成果の可視化を通じて教育内容・方法等の改善を図ることが事業の根幹となっています。そこで本年度のFDシンポジウムは「大学教育再生加速プログラム採択事業 キックオフシンポジウム」と位置づけ、「教学IRから創り出すFD」とのテーマで平成26年10月31日(金)13時30分より事務局本部棟3階第一会議室にて開催されました。 シンポジウムは3部構成で行われ、第1部は愛媛大学教育・学生支援機構教育企画室の山田剛史准教授による基調講演「学生の主体的な学びと成長を促す学修成果の可視化」、第2部は上野誠也FD推進部門長による他大学の教学IRの事例紹介、第3部は「教学IRで創る教育改善」とのテーマでのグループディスカッション、という内容でした。  第1部の山田准教授の基調講演では、先ず学修成果測定をめぐる背景として「大学評価と質保証」の解説があり、続いて「IRとは何か」、「何のためのIRか」、「どのような形でIRを進めるのか」について分かり易く話をしていただきました。 第2部の他大学の教学IRの事例紹介では、事例を「学修タイプ」「就職指導」「留年防止」「教育方針」の4つに分け、各区分につき2大学ずつ、その取組みの特徴が紹介されました。最後の第3部では、2つの課題(「卒業したかったのに退学した学生」、「就職できなかったために留年した学生」)を設定し、先ず各課題に挙げられた学生のもつ特徴やその課題に至った理由について各グループで意見を出し合いました。そして、学生の特徴/課題に至った理由を把握するためのデータ/調査方法は何かについて各グループで議論を行いました。「ディスカッションの時間が短い」とのご指摘もありましたが、「他学部の教員とディスカッションが出来て良かった」という声が聞かれたように、様々な学部・部署の教員・職員が混ざり合い、各グループで有意義な議論が展開されました。 今回のシンポジウムの参加人数は29名(教員14名、職員15名)でしたが、最後のアンケートには「IRの意味がよく分かりました」、「今後の大学教育のあり方として、IRという考え方についての理解が深まりました」といった声が寄せられていました。 「教学IRから創り出すFD」が本シンポジウムの副題であるが、そもそもIR(Institutional Research)とは何なのか、それをどのようにFDに活用していくべきなのかという基本的な点について共通認識を持つことは、極めて重要です。この点に関して、講演者の山田氏は、愛媛大学で教育・学生支援の実務に携わるかたわら、心理学と大学教育学を専門とする研究者でもあり、IRにも造詣が深く、今回のシンポジウムの基調講演にふさわしいお話をいただくことができました。 講演では、まず近年の大学評価において大学の「自己点検・評価の実質化」が重視されている点が指摘され、そのなかでのIRの重要性が強調された。そしてその上で、大学が単に成績にとどまらない学生の「学習の成果」(Learning Outcomes)をいかに測定し、それを大学教育の質保証につなげていくかという点が主に論じられた。具体的には、学習成果アセスメントのステップとして、「学習成果の設定の可視化」から「結果の活用・共有」にいたる5のステップが示され、IR推進のための様々なツールが紹介されました。 印象的であったのは、山田氏が指摘した、IRを積極的に利用しているアメリカの大学においてもIRを利用したPDCAサイクルがうまく機能するには数十年単位の時間がかかっているという点でした。当然と言えば当然でありますが、データから有用な結論を出すには、適切な分析方法の利用のみならず、分析目的に合致したデータ自体の一定の蓄積が不可欠です。山田氏によれば、IRの効果的な推進に関しては、「現実には、どこの大学も試行錯誤で“走りながら考えている”状況」とのことですが、IRの有効な活用には、大学として長期的な視点を持って継続的に事業を進めていくことが何より重要であると言えます。平成26年度FDシンポジウム「教学IRから創り出すFD」の開催基調講演「学生の主体的な学びと成長を促す学修成果の可視化」有意義な議論が展開される山田先生の基調講演グループディスカッションでのワークの様子大学院国際社会科学研究院 加島潤3

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