AP/FD NEWS Letter 創刊号
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(2)入社5~6年目社員の課題から 入社5~6年といえば、仕事は一人前にできるようになる時期です。自分の立ち位置や、周囲の置かれた状況が見えてきます。組織内で自分の能力がどの程度のもので、職務を通じて自覚した適性をどう活かすか、自分はどんな方向性のキャリアを歩みたいかなど、新入社員の頃に比べ、直面するキャリア課題も深化していることでしょう。結婚や出産・子育てという私生活面の変化も現実味を帯びる時期です。調査対象の卒業生には、社会人としての第二段階に表われる課題を訊ね、企業側の人事担当者には、仕事が一通りできるようになった社員に求めることについて訊ねました。 企業側が入社5~6年目の社員に求めることを集約すると、「組織のリーダーになる意識と、より高度な業務遂行能力」になり、具体的には以下の4項目に分けられました。①今までより広い視野を持ち、業務のレベルを上げる②組織の中での役割を管理職目線で積極的に果たしてほしい③私生活を含めキャリア形成意識をもつ④女性総合職では、男性と同じ条件下で活躍を期待する ここで注目すべきは、「③キャリア形成意識」です。「5年目は自分のテリトリーが分かってきて、仕事も面白くなる時期。落ち着いて自分を顧みられるようにもなる。さらに、リーダーになる時期なので、責任が伴ってくる。そこで悩むのは、やはりキャリアのことだろう。この先どうしようと。技術職でずっと進むのか、マネージメントに移行するのか。上からどう思われているのだろう。結婚どうしようか、子どもはどうしようか、などキャリアと私生活の課題に集約できる(理系人事)」と、企業側は考えています。卒業生側は、「出世欲はある。専門的なことをやり続けるのは性に合わないので、管理者になっていきたい。でも人を蹴落としてまでではない。適切なところまで登りつめたい(理系卒業生)」、「職場のマネージャーや部長を見ているとなりたくない。苦行としか思えない。上からは理不尽なことを言われ、下はうまく動かず問題が山積み。上司がやるような仕事ではないこともやるようになってくる、長生きしないね(理系卒業生)」と、人並みに出世はしたいが管理職の役割を担うことには懐疑的な意識も強いようです。さらに「5~6年同じ仕事をやるとそれなりに分かってくるので、飽きるではないが、他のこともやってみたいと単純に思っている。同世代の話を聞くと、漠然とだが、自分はこのままでいいのかなと思う(文系卒業生)」、「会社は将来性があるのかなと思う。30年後は大丈夫なのか疑問(理系卒業生)」と、会社にも自分にも、キャリア形成上の漠とした不安を感じています。就職・就業中心のキャリア意識から、人生の視点で自分らしいキャリア形成を考える意識への移行が見られます。 さらに④について、女性総合職に対する企業側の見かたは、「女性の価値観、働きかたはライフイベントで変わっていくのは仕方がない面がある。30歳前後は仕事がだんだん面白くなり、残業負担も増える時期。女性としてなぜ働くか、共働きが増えているので男性がパートナーとして注意を払うようになってほしい。結婚して、出産する時点で自分のキャリアを考え始めても遅い(理系人事)」、「女性はライフイベントの影響があるが、総合職である以上、夫や子供と離れて転勤になっても働く覚悟があるか、が求められる。男女にかかわらず、働いてもらう。しかし、結婚や出産で退職する女性はいる(文系人事)」に集約できます。加えて、「伝統的に女性が働きづらい会社なのは我々の課題。4~5年目で、結婚してもここで働き続けるのかと考えた時に辞めていってしまう(文系人事)」という実情と反省もあるようです。一方、卒業生の女性は、「産休をとっても戻ってきてほしいと思われる人に成長しないと、産休や育休のあと戻れない(理系卒業生)」、「このままでいくとリーダーになり責任を持たされるようになる。自信を持って業務上の判断をできるようになるなど、ワンランクアップしたい。結婚・出産しても仕事は続けたいと思うが、ものすごい業務量があるので、家庭を持つ人はすごいと思う(文系卒業生)」と、結婚・出産後の仕事や、責任を担うことについても意欲的ですが、現実は厳しく仕事と家庭の両立には不安を感じています。 ここには女性社員本人の働く覚悟の問題、産休・育休や時短勤務を受け入れる企業組織の体制や上司の意識の問題と共に、人生のパートナーとしての働く夫の意識や協力の問題があります。一連のインタビューでは、このテーマに関して男性卒業生からは自発的な発言は得られませんでした。協力はしたいけれど自分も忙しいという引け目、または「対岸の火事」的な意識が男性側にはあるのかもしれません。前掲の文部科学省が、「キャリアプランニング能力」を就業力の1つに位置付けた意義がここにあります。(3)就業力の構造 インタビュー調査からは、就業力が発揮されるまでの大まかな構造が浮かび上がりました。①担当職務に対する《主体性》が各スキルの原動力として作用する②主体性に基づき、各種スキルが発動する③それらは《コミュニケーション能力》により、周囲に働きかけられる 興味深いことに、卒業生のインタビューで「主体性」という用語は自発的な発言としては皆無でした。新入社員の主体性が問題視されているが、と問いかけると、「失敗するかも、怒られるかもと思ってもちょっと無理をして根回しをしに行くという動きは、若手メンバーは鈍いかなと思う時はある。それで実行力とか主体性という部分で、マイナスポイントをつけられているのではないかなと感じる(文系卒業生)」、「それよりも自分の意見とか改善提案とかして来いということなのかなと思う(理系卒主体性コミュニケーション能力実行力課題解決力交渉・調整・ディベート力論理的思考力情報収集・分析力チームワーク、協調性外国語能力ビジネスマナー、常識6

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